【知的障害と成年後見制度】

Rさん(35歳)は,軽度の知的障害をお持ちでした。

養護学校を卒業後,軽作業をする会社に就職、最近実家を離れて一人暮らしを始められました。

少ないながらも何とか一人で生活できるだけの収入はあるものの月の半ばになるとお金がなくなっていかれたようです。

営業マンに勧められるままいろいろなものを買ってしまうためで、「高級羽毛布団セット」などは、ローンの返済が3年分もある。

Rさんのご両親は,Rさんの生活のため,遺産はすべてRさんに相続させようと考えていらっしゃいます。

ただ、財産がRさんの所有となった後,果たしてRさんがきちんと管理ができるかどうかが,心配の種でいらっしゃいました。

知的障害をお持ちの方には,強く自己を主張するのが不得手な人が少なくなく,そのため無用な物を無理に売りつけられることがあります。

販売形態と購入した商品やサービスによっては「クーリングオフ」が適用できる場合がありますが,周囲に適切に助言をしてくれる人がいないと,クーリングオフの期間を徒過してしまったり,そもそもクーリングオフの認められない販売形態や商品などの場合には,救済手段がありません。

知的障害があるとはいえ,就職して一人住まいをしているRさんの場合,さまざまな商品の勧誘を受ける機会があるので,Rさんの「自立」を支えながら,不利益を防ぐ手だてを考える必要があります。

成年後見制度中、「補助」の利用は,その1手段といえます。

家庭裁判所にて「重要な財産の得喪」について同意権の付与を受ければ,数十万円もする「高級羽毛布団セット」の購入には補助人の同意が必要であり,同意なくRさんが購入しても後で取消すことができます。

なお,できるだけRさんの自立の妨げにならないように,同意権の範囲は必要最小限にとどめておくべきとも言えます。

将来,ご両親の財産を相続したときには,必要に応じて同意権の範囲を広げていけばよいでしょう。

また,「任意後見制度」の利用も考えられます。

ご両親の心配は,将来の「財産管理」にあるようでした。

ご両親がお亡くなりになられた後に、相続した財産をRさんご自身が管理していくことができるか,誰かにだまし取られはしないか,というものです。

前述したように成年後見制度中、「補助」の利用も考えられますが、ご両親の助言のもとに,現時点で信頼できる任意後見受任者を探し、「任意後見契約」を綿結しておく方法もあります。

ご両親が亡くなったとき,任意後見をスタートさせて(任意後見監督人を選任して),Rさんが取得する遺産を任意後見人に管理してもらうということです。

任意後見では「取消権」はありませんが,「高い買い物をするときには,必ず任意後見人に相談する」という習慣ができれば,不利な取引をすることは事前に予防できる事もあるでしょう。

ただ、成年後見制度の利用が必要であると判断されても、Rさん自身が補助人や任意後見人の助言を受け入れるという気持ちを持つことが大切です。

そのためには,ご両親とRさんが今から将来の財産管理等についてよく話し合っておくことが大切でしょう。


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